かんぽ生命といえば元は郵政省で国と関連のある保険会社なのはご存じの通りです。郵便局と連携をして学資保険や養老保険を販売しています。元が国という事で、本来高齢者に信頼のとても厚い保険会社のはずですが、2019年は郵便局員が厳しいノルマを守るために高齢者をターゲットに『不適切な販売』で物議を醸しだしました。

トップ3は辞任したけれども、まだまだ再発防止の手立て等先は一向に見えてきません。
世間の熱が落ち着いたところで、今回のかんぽ生命のどの部分が『不適切な販売』だったのか、改めて考えてみましょう。

かんぽ生命の行った『不適切な販売』とは?

今回、かんぽ生命では新規獲得のために既契約者である高齢者に対して『乗り換え』を提案しています。本来、既契約者の乗り換えは、古い契約と新しい契約が重なる期間を出来るだけ短めにして、ダブりを極力避けるのが一般の保険業務です。

ところが今回、『新規獲得』のためにかんぽ生命が既契約者に行ったのは
①6か月以上新旧の保険が重なるようにした
②3か月以上『無保険状態』にして乗り換えをさせた
この2点となります。

まず①については上記の通りで、不要な契約を二重に結んだ状態で故意に半年置いておく事は、いらない保障分も合わせて二重に保険料を支払う事になり、契約者が不利な状態に置かれます。
そして②については①より悪質です。
せっかく契約が手元にあったはずなのに、郵便職員の不適切な勧誘で解約。更に『新規獲得』の営業成績を得るために、新契約を3か月遅らせる事で被保険者を無保険状態に置くことになります。

被保険者を無保険状態に置くとはどういう事になるのでしょうか?

保険の販売で一番あってはならないことが『無保険状態』を自ら作り出すという事です。無保険状態というのは保険の保障を一切持たないという事です。
保険の営業は、お客様に保険商品を紹介し契約を結ぶことで保険の保障を提供します。乗り換えの場合は無保険状態にならないように旧保険の解約のタイミングを案内するものです。今回、それを悪用して3か月の無保険状態を作るというのは保険に関わるものとしてあり得ない話です。

この無保険状態の時に、給付金請求の事由が発生した場合に保障対象とならないからです。またこの期間に病気等になる事で新保険の引受を保険会社から断られる可能性だってあります。
そうなると、せっかく持っていた保険があったのに保険契約を持てない状況に陥る事になります。

以上の点から②については①より悪質なのです。

今回の問題の悪質性

今回、かんぽ生命で新規獲得となる条件として
①6か月以上の保険の二重契約
②3か月以上の無保険状態   を作り出す必要がありました。
その条件に合わせて営業が契約者に持ち掛けて上記2点の状況を故意に作り出しています。

せっかくご契約頂いたお客様に対して、その信頼を裏切って自分の成績のために利用するという事は一体どういうことなのか。

まず、新規獲得のために既契約者に対して不要な乗り換えを提案する事自体が、営業として間違っています。先ほども書いた様に保険には引受するかどうかの審査が付きものです。申し込みをしたからといって必ず契約出来るとは限らないのです。

また、今回は上記2点のみでなく、高齢の契約者に対して被保険者を孫や子どもに設定した死亡保険を結ばせたり、契約の内容を理解出来ない高齢者に数多くの契約を結ばせたりしたという事。
被保険者を孫や子どもにした場合、彼らが高齢の契約者より先に亡くなる確率は極めて低いはず。かんぽ生命側からすれば死亡保険金の支払いをせずに済み、保険料だけ受け取れる事になります。不適切な保障内容です。

また、契約の内容を理解出来ない高齢者に複数の契約を結ばせることに至っては、異常な状態に気づいた契約者の子どもが保険の解約を申し出ても「本人の希望だから」と解約の手続きを取ろうとしなかった事もあるとの事。
極めて悪質です。「本人が『いいよ』といったから」この契約は問題ないなんて、高齢者を狙った訪問詐欺と変わりないです。

こうした強引な営業をした理由

そもそもこうした強引な営業をかんぽ生命が行った理由ですが、かんぽ生命の営業と日本郵便を含んだ上層部とのねじれがあったと言われています。それを受けて今回トップ3の退陣となった訳ですが、元々かんぽ生命のノルマは少なくとも30年ほど前から厳しい締め付けを受けているとも言われています。

こうした事もあり、今回、金融庁と総務庁からこの問題に対して1/1から3か月間の新規契約停止命令が下され、それに伴い、日本郵政・日本郵便・かんぽ生命のトップ3人の辞任となりました。
業務改善命令も出されていますが、ただ、テレビで見る限りでは3方とも反省の色が見られず、責任転嫁している場面が目立つ印象です。

かんぽ生命の営業がノルマに締め付けられることのない、健全な運営が行われることを切に願うばかりです。