私たちは保険に助けられるシーンが数多くあります。例えば病気になって入院や手術を受けたときに医療保険に入っていれば、給付金の請求が出来ます。そういった時に「保険に入っていてよかった」といった言葉がよく聞かれます。突然配偶者に亡くなられて途方に暮れたときなど、不謹慎ではあるけれども「保険に入っていれば…」というシーンだってあります。

ただ、そうした保障が欲しいあまり、例えば病気が分かって入院する事になったので慌てて医療保険に申し込む、がんになったので慌てて死亡保険に申し込む…そういった事って一体どうなのでしょうか?

逆選択とはどういう事を指すのでしょうか?

入院したり死亡する可能性がすでにあるのに、保険の保障が欲しいために進んで保険に入ろうとすることを逆選択といいます。逆選択という言葉は保険用語ですが、通常の保険の考えではあり得ない選択の仕方をする事です。
本来、保険とは万が一のための保障を提供するものであり、今現状起こっている事ではなく、将来何か起こった時のために加入するものです。ですから加入時に給付金請求の可能性が起こっている事はあり得ないはずです。

お客さん側が保険を悪用している事は、理解出来るかと思います。

ただ、保険会社も逆選択を防ぐために様々な予防線を張っています。加入時の告知の時点で入院や手術を進められている人は加入出来ない様になっています。また、死亡保険金の上限が定められているのも逆選択を防ぐためです。
もしそれを潜り抜けて保険に加入をしたとしても、入院や手術、死亡給付金請求の時に問題があると保険会社が判断した場合には調査が入ります。その時点で加入前に不自然な部分があった場合は契約解除になり給付金も支払われません。もちろんこれまで支払った保険料も戻ってきません。

加入して一定年数以内の自殺に対して死亡保険金が給付されないのも、逆選択を防ぐためです。

逆選択をする心理

わざわざ申込書や告知書にウソをついてまで逆選択をする理由って何でしょうか?

保険は何かあった時に給付金を請求し保障として金銭を得るシステムですので、お金が必要な何かが自分の身に起こった事になるはずです。例えば一例ですが、病気になり入院費用が捻出出来ないとか、事業のお金が足りないので自分が死んでお金を残したいなどですね。本人にお金が必要な差し迫った理由があって、保険を利用する事を思い立っての逆選択だとは思うのですが…そこに保険を利用する必要はないですし、「お金が足りないので保険を使おう」と思いつく事がまず一般的ではないと私は思っています。

普通はどこからか借りようとしませんか?

先ほども書いたように、保険加入には保険会社が引受を決定することが必要ですし、そのためには健康状態の告知や申込書の記入、そして引受が決まるまでの時間もそれなりに必要です。思い立ってすぐに加入が出来るわけでもないのです。
私は持病のある方が、保険会社の引受までドキドキしながら過ごす様子もよく見ていますし、告知書記入も大抵の人はどの様に記入したらいいのか迷うものです。きちんと告知をするお客様の様子は分かっているつもりです。

そういった中わざわざ逆選択をすること自体が、良心のなさを感じます。

営業にそそのかされての逆選択

あとは、営業に騙されてウソの告知書を書かされたケースもあります。

成績の欲しい営業がお客様に「告知書はすべて『いいえ』で書いてもらっていいから」と話してお客様がその通り書いて申し込んでしまったケースです。告知書がすべて『いいえ』であれば健康状態は問題ない事になるので、保険会社が引受する可能性が極めて高いです。
これは営業にかなりの問題があります。

ただこのケースはお客様には気の毒でしたが、入院給付金を請求した段階で告知義務違反が保険会社にバレ、給付金の支払いもなく契約解除となりました。

逆選択はどの様な影響を与えるのか

こういった逆選択は、何度も書きますが本来の保険の姿ではありません。

保険会社から支払われる給付金は、保険会社の資産から支払われるのではなく全てのお客様が払い込む保険料からの支払いになります。目的から外れた給付金の支払いは、本来支払われるべき給付金の原資を使い込む事になり、不足分はあらたに保険料の上昇を招きます。
結果として、お客様の負担が増える事になりますし、正常な保険運営を損ねる事になります。

元々、逆選択への保険会社の考えはとても厳しいものです。

一昔前なら、保険とは営業の勧誘で入るものであり、お客様自身が保険に入ろうと保険会社に自発的に連絡をする事自体が逆選択とみなされ、確認が入ったものです。
最近は自分で保険を選ぶという考えが一般的になり、お客様自身が積極的に保険の事を知ろうと自身で代理店などに足を運びます。私自身は、それはとてもいい事だと思うのですが、せっかくお客様が保険に興味を持ってくれる様になった今の流れを妨げるような逆選択は、やめてほしいと心から願うものです。

これからもお客様のためにも健全な保険運営が出来ることを心より願っています。